2017/05/10

喫茶店の話

 山川直人さんの『珈琲桟敷の人々 シリーズ 小さな喫茶店』を読む。既刊の『一杯の珈琲から』『珈琲色に夜は更けて』に続くシリーズ三巻目。絵を眺めているだけでも楽しい。
 喫茶店が舞台。登場人物はみんなちょっと不器用。さりげなく「すこし不思議」な要素も入っている。

 両親がコーヒー好きだったので、わたしは子どものころから喫茶店に通っていた。
 日曜日は、父とふたりで近所のドライバーという喫茶店によく行った。最初はミルク。小学校の高学年くらいからコーヒーを飲むようになった。ドライバーは卵焼きをはさんだトーストサンド、チャーハンもうまかった。無口な父とは、行きも帰りもほとんど話をせず、喫茶店でもお互い漫画雑誌を読みふけった。

 あの店がいつまであったのか、おもいだせない。東京で暮すようになってからは、帰省するたびに寄っていたのだが、いつの間にかなくなっていた。
 今でもドライバーのチャーハンが食べたいとおもうときがある。たぶん、トーストと同じバターをつかっていたのではないか。わたしは家でチャーハンをつくると、どうしても味が和風になってしまう(醤油を入れるからなのだが)。

 父はその後、ときどきほかの喫茶店に通っていたようだが、わたしはその店にはほとんど行っていない。

『珈琲桟敷の人々』の「消えていく店」は、コーヒーが旨くて、雰囲気もいい、すこし無愛想なマスターが営んでいる店の話。読み終わったあともずっと考えてこんでしまった。