2017/02/06

金沢の夜

 日曜日、金沢。大学時代、金沢は二回訪れているが(一回は取材)、いずれも名古屋経由で、東京から向かうのははじめて。北陸新幹線で二時間半。自分の中の日本地図の感覚が変わる。

 金沢駅に着いて食事していたら、雨が降りだす。コンビニで傘買う。
 駅前のビジネスホテルにチェックインして、オヨヨ書林に行って、香林房周辺を散策する。二十五年ぶりの金沢。記憶が薄れているのもあるが、町が様変わりした気がする。でも東京や大阪といった大都市から離れた場所にある町ならではのよさもある。なんとなく落ち着く。金沢のような町のよさは、若いころはわからなかった。

 犀川で8番ラーメンを食べる。

 そのあと近江町市場に戻り、メロメロポッチ。杉野清隆さんと世田谷ピンポンズのライブ。今回の金沢行きも、このライブを観るのが目的だった。それにしても、いい店。音楽好きが集まっているかんじが、店内に充満している。
 世田谷さんは今年初のライブだったそうだが、あいかわらず、声、素晴らしい。曲の前にいろいろ喋る。喋りと歌詞が重なったり、ズレていたりするのが、おもしろい。昔、好きだった子のことをネットで調べたら、結婚していることがわかって作ったという歌(うろおぼえ)が、すごくよかった。
 杉野さんは、はじめて観たときから、異様な完成度というか、これ以上、引くところがないくらい、ギリギリの音で歌を作っている。曲はしみじみとしているのに、一曲一曲緊張感がある。ギターの音の研ぎすまされ方も圧巻だった。
 この日が雨だったということもあるかもしれないが、世田谷さんも杉野さんも、雨の日の歌が多い……というのは発見だった。

 打ち上げにまぜてもらったのだが、お客さんもおもしろい人ばかり。世田谷さん評、杉野さん評、鋭い。たしかに、杉野さんの曲は、フォークだけど、ロックなのだ(フォークロックではない)。伝わらないかもしれないが、聴いたらわかるとおもう。

 帰り道、独自性と技巧——のバランスについて考える。杉野清隆さんは、今の日本のミュージシャンの中でもそのバランスにおいて最高峰といっても過言でない。地味だけど。独自性と技巧の両方が揃っているミュージシャンというのはほんとうに稀なのだ。
 そして道に迷う(なぜか駅を通り抜けてしまう)。熟睡。