2016/08/01

ブログ十年

 二〇〇六年八月からブログをはじめて十年になる。当時、わたしは三十六歳。最初の単行本の刊行が、翌年の五月——当初は本のための未発表や未完成の原稿の整理とデータのバックアップも兼ねてブログを開設した。だから最初は非公開だった。

 高田馬場の居酒屋で古書現世の向井さん、「退屈男と本と街」の退屈君と飲んでいたとき「ブログを書きはじめた」といったら、ふたりに公開したほうがいいと勧められ、その日の晩に公開した。

 最初は書き下ろしのエッセイを中心に発表していたのだが、途中から日記とエッセイの中間みたいな文章になった。
 今は仕事の原稿にとりかかる前のウォーミングアップがわりにテーマを決めずに書くことが増えた。要は、素振りや走り込みみたいなものだ。

 商業誌の仕事は文字数の制約があるから書きたいことを書き切れない。昔からわたしはどうでもいい話(その日の体調とか弱音とか)から書きはじめて、推敲のさい、その部分を削ることが多かった。自分としては削ってしまう部分にも愛着がある。

 わたしは八百字くらいの短い原稿を書くのが好きなのだが、不特定多数の読者、自分のことを知らない読者を想定した原稿では、「主観」を薄めて書く。しかし、そういう原稿ばかり書いているとなんとなく欲求不満になる。どうでもいいことが書きたくなる。

 何を書くか決めず、だらだらと書きはじめ、どこに行き着くかわからない——というかんじの文章も書いてみたい。書きながら考える。考えながら書く。途中で行き詰まったら「続く」にすればいい。何かおもいついたら、また書けばいい。無理して書くことだけはやめようとおもっている。

 とりあえず、十年だ。今、四十六歳。十年後、どうなるかわからない。高円寺にいるかどうかもわからない。この先、ブログというサービス自体、存続しているかわからない。振り返ると、ずっと低迷していた気もするが、ブログを十年続けることができた。この十年で成長したかどうかはわからないが、わたしの目標は書き続けることなのだ。誰かに「やめろ」とか「つまらない」とかいわれても、わたしは続けたい。本が売れる。仕事の依頼がたくさんくる。そうなったら嬉しいけど、そういう目標は自分ではどうにもできない部分も多い。

 でも続けるかどうかは(ほぼ)自分次第だ。持続を目標にしていれば、そんなに大きくは間違えないとおもっている。

……というわけで、まだまだ続けるつもりだ。