2015/12/30

できる範囲

 限られた時間の中で何かをする。そういう生活を続けているうちに、できないことをやらなくなってきた。「できる範囲」ですむことばかり選んでいる。
 できるかできないかわからないことに挑戦するより、今の自分ができることをしたほうが効率がいい。すくなくとも、その効率のよさは期日の迫った仕事には役に立つ。

 ひさしぶりに楽器にさわる。指がおもいどおりに動かない。それでもヘタなりに自分の「できる範囲」はある。だが、もともとの技量が低いから「できる範囲」がすごく狭い。初歩の初歩のところで躓いている。ほとんど何もできないに等しい。

 何でもそうだが、「できる範囲」をひろげるためには、できるかどうかわからないことをやってみるしかない。
「もうすこし若ければ」
「時間があれば」
 言い訳ばかり浮かんでくる。「そんなひまがあったら仕事しろよ」ともおもう。

 いっぽう「できる範囲」のことでも、くりかえしているうちに、すこしずつうまくなることもある。
 料理に関していえば、二十歳のころより、今のほうがいろいろなものが作れるし、手際もよくなっている。別に寝る間を惜しんで勉強したわけではない。毎日、簡単な料理をひたすら作り続けていたら「できる範囲」も広くなった。簡単な料理も、今のほうが早くできる。

 どんなことでも続けてさえいれば、それなりに技量は上がる。
 続けるためには、無理はできない。しかし、初心者のうちは、あるていど無理しないと「できる範囲」は広がらない。
 その無理のさじ加減も「できる範囲」が狭いとわからない。
 すぐできるようになるもの、三年くらいかけないとできないもの、十年やってもできるかどうかわからないもの……。

 年をとると、やってみる前から「できない」とわかることが増えてくる。人生の残り時間を考えると、何でもかんでも手を出すわけにもいかない。時間もないし、体力もない。

 今の自分には「できない」けど、未来の自分は「できる」ようになっている。
 そうおもえるかどうかはけっこう重要なことかもしれない。

 とりあえず、来年の課題にしたい。