2015/06/04

自分が生まれなかった世界

 仕事が一段落したので、石黒正数の『それでも町は廻っている』の十四巻を読んだ。この巻で、自分が生まれなかった世界にまぎれこんでしまう歩鳥の夢かなんだかわからない話があった。歩鳥が生まれなかった世界で、消えてしまっていたものは……。これはけっこう考えさせられた。

 仮に自分がこの世に生まれなかったとしても、歴史が変わるわけではない。でも自分の本はなくなるし、今、やっている連載のスペースは、別の誰かが書いている。ちょっと読んでみたい気もする。
 自分のことをまったく知らない人には何の変化もなくても、いつの間にか知らないうちに、身近な人には何かしらの影響を与えていて、それによって、人生が微妙に変わることもあるのかもしれない。何も考えずにいった一言が、誰かの人生を左右することだって、ないとはいえない。

 子どものころ、学校の帰り道に、いつもとちがう角を曲がって、別の道を通ったら、運命が変わるのだろうかとよく考えた。大人になってからも、似たようなことを考える。
 どちらを選んでも、たいしたちがいのないことでも、小さな選択の差が積み重なると、大きなちがいになるのではないかと……。

 家にこもって仕事をしているときも、このまま原稿を書き続けるか、気晴らしに飲みに行くか、しょっちゅう迷う(だいたい飲みに行くのだが)。

 古本屋をまわっていて、疲れたから帰ろうとおもいながら、もう一軒、足をのばしたら、ずっと探していた本が見つかった。これまでそういうことが何度かあった。

 書いているうちに何の話がしたかったのか忘れた。