2015/05/28

夏葉社の新刊

 昨晩、夏葉社の島田さんと高円寺で飲んだ。今月、橋口幸子の『いちべついらい 田村和子さんのこと』、黒田三郎の詩集『小さなユリと』が夏葉社から刊行された。
 今回の夏葉社版の『小さなユリと』は、一九六〇年に刊行された昭森社の『小さなユリと』の完全復刻。表紙の絵は黒田ユリ。奥付の発行日の五月二〇日も同じである。

 二十代のころ、吉行淳之介と鮎川信夫を知って、それから第三の新人と「荒地」の詩人の作品を追いかけるようになった。吉行淳之介でいえば、父エイスケの交遊関係もあるし、「荒地」の詩人でいえば、彼らが翻訳した海外の詩や文学にまで関心は広がる。

 わたしが最初に読んだ黒田三郎の本は『死と死のあいだ』(花神社、一九七九年刊)というエッセイ集だった。この本の中の「詩をして語らしめよ」で、天野忠、杉山平一、大木実、会田綱雄、菅原克己といった詩人を知った。黒田三郎は一九一〇年代生まれの詩人(天野忠は一九〇九年生まれだが)をこんなふうに評している。

《詩を通じて知るかぎりでは、一様に皆、シャイな性格のようである。シャイであるだけでなく、切ないくらいにやさしいところがある》

 この言葉はそのまま黒田三郎の詩にもあてはまる。
 島田さんは「黒田三郎を知らない読者に読んでほしい」といっていた。わたしもそのつもりで『小さなユリと』の解説を書いた。