2014/10/12

マイケル・ルイスの新刊

 先週は新宿のベルクで藤井さんの写真展を観て、今週はステーキハウスKYOYAで肉を食った。うまかったし、居心地もいい。途中から白ワインを飲み続け、ふつうに飲み屋にいる気分になった。ラーメンとうどん以外の外食は久しぶりだった。
 毎日、飲んだり本を読んだり仕事したりしている。仕事がつまってくると、部屋にこもがちになるのだが、なるべくいつもどおり散歩や家事をしたほうがいい。そうしたほうがよく眠れるし、その結果、仕事もはかどる。

 文藝春秋のマイケル・ルイスの新刊が気になるのだが、その前に何冊か仕事に関係する本を読まないといけない。といいつつ、結局、『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(渡会圭子、東江一紀訳、文藝春秋)を読んでしまった。我慢できなかった。我慢できるわけがない。

『フラッシュ・ボーイズ』は、投資の世界で繰り広げられていた、ミリ秒、マイクロ秒といった単位の速度で売買情報を察知する超高速取引業者たちのカラクリを暴いていくノンフィクションである。マイケル・ルイスは『マネー・ボール』が有名だけど、『フラッシュ・ボーイズ』も難攻不落のようにおもえるシステムに変化を起こす個人(変わり者やはみだし者)を描いていて、金融や株の話がわからないのに、おもしろい(いちおう、九〇年代には経済系の業界紙の仕事をしていたのですが……)。

 読んでいる最中から、これはまちがいなく映画化されるだろうとおもった。日系人のブラッド・カツヤマ役は誰がやるのだろう。すでに『HEROS ヒーローズ』でヒロ・ナカムラの役のマシ・オカにオファーがいっているのではないか。ハマリ役だとおもう。

……と、ここまで書いて、訳者あとがきで、東江一紀が今年六月に亡くなっていたことを知った。別名義は楡井浩一。ジャレド・ダイヤモンド著『文明崩壊』(上下巻、草思社文庫)やビル・ブライソン著『人類が知っていることすべての短い歴史』(NHK出版)の訳者でもある。

 東江一紀のノンフィクション系の翻訳を愛読していた身としては、あとがきを読んで、呆然となって、飲んでいる場合ではなかったのだけど、ペリカン時代に飲みに行くことにした。
 しばらく飲んでいたら、先日、長野でお世話になった書店員兼編集者の塚田さんも来て、『フラッシュ・ボーイズ』の話になって、「アガリエさんの担当だったことがある」という。すごく面倒見のいい人で、若い翻訳者からも慕われていたそうだ。酔っぱらっていたけど、わたしが東江訳のノンフィクションをどれだけ好きだったかという話をして帰ってきた。