2011/07/04

星を撒いた街

『上林暁 傑作小説集 星を撒いた街』(山本善行撰、夏葉社)が届いた。
 山本善行さんの撰者解説に「読み返した作品を全部入れたくなり」とあって、そうだろうなあとおもう。
 文庫(品切も多いけど)で読める代表作をいれるかどうか、作品の年代やテーマの重複を避けるべきか、頁数の制約もあるし、ものすごく迷ったようだ。
 そして残った七篇。
 読む前にどんな作品が収録されているのか、これほど気になったアンソロジーはない。これを読んだら、もっと上林暁の小説が読みたくなる。そんな七篇だ。
 ちなみに、わたしがいちばん好きな上林暁の作品は六作目に入っていた。
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 夏葉社の島田さんが最初に刊行したマラマッドの『レンブラントの帽子』に、京都で古書善行堂を営む山本さんが熱烈なエールを送った。エールだけでなく『レンブラントの帽子』を売りまくった。さらに本を売るだけでなく、次に夏葉社から出してほしい本のタイトルまでブログに公表した。
 それが関口良雄の『昔日の客』だ。
 まだそのころ島田さんと山本さんは面識がなかったらしい。
 島田さんは『昔日の客』も知らなかった。
『昔日の客』は、山王書房という古本屋が遺した随筆集で長く入手難になっていた。インターネットの古本屋の相場は一万五千円くらいしていた。
 驚いた島田さんは、国会図書館で『昔日の客』を借りて読んで、その作品に惚れこみ、即刊行を決意する。
 そして今回の上林暁の本が出ることになった。
 上林暁は『昔日の客』の関口良雄、そして山本さんが敬愛し続けた作家である。とにかく山本さんは口を開けば、カンバヤシ、カンバヤシといっている。何回聞いたかわからない。
『星を撒いた街』は、東京の古本屋の関口良雄と京都の古本屋の山本善行さんの上林暁への愛情が、時空を超えて結晶化した一冊である。

 ゆっくり味わいたいとおもう。